海外FXテクニカル分析

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「フィボナッチエクスパンション」は、現在の値動きに基づいて、将来の抵抗・支持帯を把握するテクニカルツールです。
FXで使われるフィボナッチ系の指標はいくつかありますが、中でもフィボナッチエクスパンションは、利益確定の目安として使用することができます。
この記事では、フィボナッチエクスパンションの概要や描画方法、そして利確の目安としての使い方などを分かりやすく解説します。FXの決済ポイントで悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみて下さい。

この記事の目次
フィボナッチエクスパンションの基本
テクニカル分析指標の中には、イタリアの数学者レオナルド・フィボナッチが発見したフィボナッチ数列を使用したものがいくつかあります。特にフィボナッチリトレースメントが有名ですが、今回テーマとするのはその中の1つである「フィボナッチエクスパンション」です。
最初は、フィボナッチエクスパンションの基本について解説します。
フィボナッチエクスパンションとは
エクスパンションは、英語で拡張や発展を意味する言葉です。フィボナッチエクスパンションでは、フィボナッチの数値を用いて、トレンドがどこまで伸びるのかを予想することが可能です。以下は、MT5で実際のチャートにフィボナッチエクスパンションを表示した画像です。
フィボナッチエクスパンションでは、点線部分である3つの高安値を指定します。すると自動的に、黄色い実線で示されるエクスパンションのラインが描画されます。
トレードで重要な要素に「損切り」と「利益確定」があります。このうち損切りは、過去の値動きに基づいて設定可能なので、行うべきポイントは明確に決めることが可能です。
しかし利益確定は、先の見えない相場を相手にする要素が強くなります。どれだけ経験を積んだプロトレーダーであっても、天井や底値を正確に予想することは不可能です。そのため、何らかの目安や理由をつけて、「ある程度」のところで手仕舞いしなければいけません。
そこで役に立つのがフィボナッチエクスパンションです。フィボナッチエクスパンションを活用することで、利益確定に関する以下のような悩みを解決できる可能性があります。
フィボナッチエクスパンションの効果
- 将来の抵抗・支持帯をあらかじめ把握できる
- トレンドフォローの決済ポイントが予想できる
- 根拠のある利益確定ができる
フィボナッチエクスパンションは、特にトレンドが出ているときに意識されやすくなります。そのため、順張り(トレンドフォロー)のトレーダーにとって有効なテクニカル指標といえるでしょう。
フィボナッチエクスパンションとリトレースメントの違い
フィボナッチ分析としては、エクスパンションよりもリトレースメントのほうが有名かも知れません。フィボナッチリトレースメントとは、過去の相場で意識された高値と安値を結び、その高安値に対する押し / 戻しの目安を測るテクニカル指標です。
以下は、実際のチャートにフィボナッチリトレースメントを描画したものですが、38.2%ラインで反発しており、押し目の目安として捉えることが可能です。
フィボナッチリトレースメントはFX初心者向けの書籍で取り上げられることもありますが、基点となる高安値の判断をはじめ、使いこなすのが意外と難しい分析ツールです。値動きが出来上がった後で、「高安値はここだったのか」とか「ここが反発ラインだったのか」などと気づくこともあるでしょう。
それに対してフィボナッチエクスパンションは、トレンドが発生したタイミングで適用できます。現在のトレンドの起点と戻り高値 / 押し目安値を結べば良いため、リトレースメントと比較すると使いやすい特徴があります。
フィボナッチエクスパンションはトレンド相場で機能する
フィボナッチエクスパンションが機能するのは、「トレンド相場」です。トレンドの判断にはさまざまな方法がありますが、フィボナッチエクスパンションは高安値を選定して描画するツールという理由から、ダウ理論によるトレンド判断が有効です。
ダウ理論による基本的なトレンド判断方法をまとめると、以下のようになります。
ダウ理論によるトレンドの判断方法(上昇トレンドの場合)
- 安値の切り上げ、高値の更新が続く限り上昇トレンドは継続する
- 高値を切り下げ、安値を更新した場合に下降トレンドに転換する
実際のチャートで見てみましょう。
このチャートでは、画面左側では安値の切り上げ、高値の更新が続いており、上昇トレンドが確認できます。しかし、高値を切り下げ、安値を更新することで下降トレンドに転換し、それ以降は売られやすい相場状況になリました。
ダウ理論によるトレンド判断の基礎的知識を持っておくことで、フィボナッチエクスパンションをより有効に使うことができるでしょう。
FX初心者の場合、チャートを見て高安値を追いかけることは少々難しいかも知れません。しかし、MT4 / MT5に標準搭載されているインジケーターである「ZigZag」を使用することで、簡単に高安値を判断できるのでご安心下さい。
フィボナッチエクスパンションは海外FXで使える?
「フィボナッチエクスパンションは使えるFX業者が限られそう」と思われるかも知れませんが、海外FXではその心配はありません。
なぜかというと、フィボナッチエクスパンションやZigZagは、いずれもMT4 / MT5に標準搭載されているツールだからです。多くの海外FX業者がMT4 / MT5に対応しているため、本記事でご紹介しているフィボナッチエクスパンションやZigZagを、問題なく利用できます。
フィボナッチエクスパンションを使ったトレードでおすすめの海外FX業者は、XMTrading(エックスエム)とTitan FX(タイタン FX)です。
XMは、信頼性の高さはもちろんのこと、豊富なボーナス提供にも魅力がある海外FX業者です。現在はFXplus限定のタイアップキャンペーンとして、15,000円の口座開設ボーナスとゴールドステータスを同時に付与するW特典を提供しています。XMでまだ口座開設をしていない方は、ぜひこの機会をご活用下さい。
またTitan FXは、低スプレッドと約定力の高さが評価されている海外FX業者です。ボーナスよりも、コストを抑えた取引を重視する中上級トレーダーに支持されています。近年では不定期のキャッシュバックキャンペーンも開催しており、低スプレッドとともにインセンティブも充実しています。
フィボナッチエクスパンションの表示方法
フィボナッチエクスパンションは、インジケーターとは異なり、ワンクリックでチャート上に自動で表示できるわけではありません。高安値の確認をはじめとした、いくつかの準備が必要です。
ここからは、フィボナッチエクスパンションを表示するための準備方法を解説します。
ZigZagをチャートに表示させる
フィボナッチエクスパンションは、売りの場合は「高値・安値・戻り高値」、買いの場合は「安値、高値、押し安値」のそれぞれ3点を自由に指定して、チャート上に描画します。高安値の把握はダウ理論をベースにしますが、「どこが高値でどこが安値か?」という判断は知識や経験が必要になるため、初心者の方には難しいかも知れません。
そこで今回は、高安値の判断をサポートする「ZigZag」というインジケーターを使用します。
ZigZagは、一定の計算式によって高値と安値を結ぶインジケータです。トレンドが出ているのかどうか確かめたり、相場の波を捉えやすくしたりするために役立ちます。
ZigZagはMT4 / MT5に標準搭載されているので、ダウンロードの必要はありません。ナビゲーター欄のインジケーター一覧の中から、「ZigZag」をチャート上にドラッグ&ドロップするだけで表示させることができます。ZigZagのパラメーターの数値は変更せず、デフォルト設定のまま使用して構いません。
フィボナッチエクスパンションをツールバーに追加する
フィボナッチエクスパンションは、MT4 / MT5のデフォルトではツールバーに表示されていません。そのため、使用前にはツールバー内に追加しておくと便利です。
追加するには、ツールバー内にある「ライン等」のエリアを右クリックして「カスタマイズ」を選択します。
以下のように「ツールバーのカスタマイズ」ウィンドウが表示されるので、左側からフィボナッチエクスパンションを選択し「挿入」した上で「閉じる」をクリックしましょう。
表記違い
MT4では「フィボナッチエキスパンション」、MT5では「フィボナッチエクステンション」と表記されている場合があります。
フィボナッチエクスパンションをチャート上に描画する
フィボナッチエクスパンションの描画方法は、水平ラインなどの他のオブジェクト類と同様に、描画したいチャートを選択した上でツールを配置します。そのときに、売りの場合はトレンドの起点となるチャートの高値と安値、そして戻り高値の3点を選択していく必要があります(買いの場合は安値、高値、押し安値の3点)。
ZigZagとフィボナッチエクスパンションを描画したチャート画像をもとに、フィボナッチエクスパンションの描画方法の一例を見ていきましょう。
トレンドの起点を見つける
このチャートの場合は、②でできた安値を割った時点から下降トレンドスタートと判断できます。下降トレンドが始まった後で、①の高値が下降トレンドの起点と判断できるでしょう。
起点から1本目の線を引く
トレンドを確認したら、トレンド起点から1本目のZigZag線(①から②)に沿ってフィボナッチエクスパンションを伸ばします。起点から次の高安値までの値幅が、フィボナッチエクスパンションの基準になります。
戻り目(押し目)まで線を引く
次に、②から③の押し目(戻り目)までフィボナッチエクスパンションを伸ばします。そうすると、上記で黄色いラインで示したようなフィボナッチエクスパンションが描画されます。
61.8%が機能しているか確認する
描画したチャートでフィボナッチエクスパンションが機能しているかを確認するために、「61.8%ライン」付近での値動きを確認しましょう。61.8%ラインでレートが反応している場合、描画したフィボナッチエクスパンションが有効である可能性があります。詳しくは、次章で解説します。
プロの
助言
①〜③の高安値が良く分からないときは、相場状況が不安定な場合が多いので、その通貨ペアでのトレードは避けたほうが良いでしょう。相場状況が良い他の通貨ペアを探してみることをおすすめします。
エクスパンションの数値は何を意味する?
フィボナッチエクスパンションでは、デフォルトで61.8%、100%、161.8%の3つのラインが描画されます(本記事では、256.8%のラインも追加しています)。それぞれのラインは、基準となる高安値の値幅を元にした割合を示しています。
そのため、①から②までの値幅と、③から100%ラインまでの値幅はちょうど同じになります。
フィボナッチエクスパンションが「どの値幅に対する割合か?」を知っておくと、描画をしやすくなるでしょう。
フィボナッチエクスパンションの実践的使い方
フィボナッチエクスパンションは、実際のトレードでさまざまな使い方があります。今回は、エントリーから決済までに使える手法の一例を解説します。
まずは61.8%ラインでエントリーできるか確かめる
フィボナッチエクスパンションを引いたら、61.8%ラインで相場が反応するかどうかを確かめましょう。61.8%ラインが有効に働けば、それ以降のパーセンテージでも有効に働く期待を持てます。
次のチャート画像をご覧下さい。61.8%ラインが意識されていることが分かります。
上のチャート画像では、61.8%を終値でローソク足が抜けたあと、同じラインで支えられており、描画したフィボナッチエクスパンションが意識されていると判断ができます。このチャートでは、その後の値動きでも100%ラインや161.8%ラインが意識されました。
言い換えれば、61.8%を無視するような動きの場合、描画したフィボナッチエクスパンションが意識されていない可能性が高いと考えられます。この場合エントリーは見送り、もう一度フィボナッチエクスパンションの見直しをすべきでしょう。
今回は、61.8%ラインを抜けた後でサポートされる例を見ましたが、場合によっては61.8%ラインで一旦反発してブレイクするようなパターンもあります。フィボナッチエクスパンションを扱うには多少の慣れが必要ですので、過去のチャートで練習することがおすすめです。
フィボナッチエクスパンションで決済目標を設定する
フィボナッチエクスパンションでは、基本の値幅に基づいて複数の割合が表示されますが決済目標として利用しやすいのが100%、161.8%、256.8%の3つのラインです。
100%ラインは到達する可能性が高い数値です。その分、エントリー値から近いため、ほとんど利益が獲得できないかも知れません。部分決済するか、そのままポジションを保有し続けても良いでしょう。
161.8%ラインは基本的な決済目標です。部分決済して残りは保有することも可能ですが、反発することもあるため、利益確保を優先する場合は全決済しても良いでしょう。
256.8%ラインは、トレンドの最終目標です。それ以上は反転リスクが高まるため、保有しているポジションは全決済するのがおすすめです。
アクティブ決済とプロテクティブ決済
アクティブ決済とは、「積極的に利益を獲得する価格帯」で決済することです。一方、プロテクティブ決済は「利益をこれ以上減らさないため」の決済です。決済方法にもいろいろな考え方があることを知っておくと、戦略に幅を持たせることができます。
損切りはどこに設定する?
今回ご紹介しているフィボナッチエクスパンションの使い方では、61.8%ラインを重視しています。
例えば61.8%ラインを一旦抜けて、レートがサポートされたのを確認して買いエントリーをする場合、損切りは61.8%ラインの下に設定することになるでしょう。
また、61.8%ラインからのブレイクでエントリーする場合は、61.8%から少し離れた価格に損切りを設定して下さい。通貨ペアやボラティリティにもよりますが、1時間足チャートであれば20pips程度が目安です。損切り後に再び61.8%をブレイクしたら、もう一度エントリーします。
トレードは「損小利大」が不可欠です。損切りはできるだけ細かく行い、リスクを最小限に抑えましょう。
利確の悩みをフィボナッチエクスパンションで解決
ここまで、フィボナッチエクスパンションについて解説してきました。
トレードでは、損切りよりも利益確定のほうが難しい、と感じる人は意外と多いかも知れません。そんなときにフィボナッチエクスパンションを使えば、根拠を持った決済計画が立てやすくなります。MT4 / MT5で標準搭載されているツールなので、活用しやすいでしょう。
この記事では、通貨ペアでのフィボナッチエクスパンションの使い方を解説しましたが、通貨強弱を考慮すると、エクスパンションをより効果的に使える場合があります。通貨強弱の差がある場合、トレンドが発生している可能性が高く、フィボナッチエクスパンションが機能する通貨ペアを絞り込みやすくなるからです。
FXの通貨強弱について知りたい方は、こちらの記事もご覧下さい。
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コメント
ZigZagはインジケーターの性質上、直近のZigZag線はリペイント(インジケータの描画が相場の動きに合わせて変わること)をする可能性があります。そのため、ZigZagで高安値を把握する際は、描画中の線ではなく、1つ前の確定した線を参考にする必要があります。