海外FXテクニカル分析

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FXの環境認識とは、現在の相場環境について、トレンドの方向性やボラティリティ、重要な価格帯などを多角的に把握することを指す言葉です。中長期の流れだけでなく、トレードスタイルによっては短期的な動きも含めて分析します。
現在、トレード成績が安定せずに悩んでいるトレーダーの場合は、環境認識の技術を高めることで、課題克服の糸口を見出せるかも知れません。
この記事では、FX取引で重要な技術とされる環境認識について、やり方や注意点を分かりやすく解説します。

この記事の目次
FXの環境認識とは
FXの環境認識とは、エントリーや決済ポイントを見極めるために、大局的な相場環境を確認することを指します。
最初は、FX取引で環境認識を行うメリットやデメリットなどを確認していきましょう。
FXで環境認識を行うメリット
例えばトレンドフォローをしたい場合、方向感のある相場でだけで取引をして、レンジ相場は見送るべきでしょう。しかし、トレードする時間足だけを見ていても、全体的な相場環境を判断することは容易ではありません。
勝負する相場を見極めるときに欠かせないのが、環境認識です。環境認識を行うことで、以下のようなメリットを得られます。
環境認識のメリット
- トレードする方向を間違えにくくなる
- トレードしやすい相場か、待つべき相場かを判断できる
- 不安定な相場を回避することで、不要な損失を減らせる
- 事前にトレード計画を立てやすくなる
- 今後の値動きで起こり得るリスクをあらかじめ把握できる
もし、環境認識を行わなかった場合、自分のトレードスタイルに合わない相場にも手を出してしまい、不要な損失を積み重ねてしまうかも知れません。
環境認識が上達することで、自分の得意な相場を判断できるだけでなく、損失リスクのある相場を回避できるようになります。結果的に成績が安定し、FXで稼ぎやすくなるでしょう。
FXの環境認識は難しい?デメリットとは
もちろん、環境認識を行ったからといって、すぐに結果に結びつくわけではありません。環境認識そのものが高度な取引技術の1つなので、最初のうちは難しいと感じることもあるでしょう。
FXの環境認識には、以下のようなデメリットがあります。
環境認識のデメリット
- ある程度の知識や経験が必要になるため、有効な分析をすぐに行えるわけではない
- FXで勝つためには、環境認識以外にも資金管理やエントリー技術なども必要になる
- 環境認識が正しくても、負けることがある
「環境認識ができればFXで勝てる」というトレーダーもいるほど、環境認識はFXトレードの土台となる重要な技術です。しかし、簡単に行えるものではないことに加え、万能の技術でもないことは把握しておく必要があります。
テクニカル分析か?ファンダメンタルズ分析か?
FXの環境認識は、大きく分けてテクニカル分析による方法と、ファンダメンタルズ分析による方法の2つがあります。それぞれで、分析できることや方法は異なります。
テクニカル分析では、チャートと各種テクニカル指標を使用して環境認識を行います。中長期的な分析も可能ですが、特にスキャルピングやデイトレードなどの短期トレードを行う際の環境認識として最適です。
ファンダメンタルズ分析は、世界の政治・経済の情勢等に基づくため、中長期的な環境認識に向いています。スイングトレードやポジショントレードなどは、テクニカルとファンダメンタルズ分析を組み合わせることが効果的でしょう。また、経済指標発表による値動きなどはファンダメンタルズによる環境認識に含まれるため、短期トレードでも注意すべきです。
経済指標発表や要人発言のほとんどは、事前にスケジュールが分かっているので、事前に把握した上でトレード計画を立てることができます。
海外FX業者のXMTrading(エックスエム)では、公式サイト内で経済指標カレンダーを掲載しているので、環境認識に役立ててみて下さい。
環境認識の基本的なやり方
ここからは、テクニカル分析でFXの環境認識を行うための基本手順を解説します。ここでは、基本的なテクニカル分析に基づいた、トレードスタイルを問わず使える環境認識方法を見ていきましょう。
FX環境認識の基本的やり方
- ダウ理論によるトレンドの把握
- 水平ラインでレジスタンス・サポートを確認
- マルチタイムフレーム分析で上位足から分析する
移動平均線や通貨強弱なども考慮した環境認識方法については、本記事の別項目で解説していますので、合わせて参考にしてみて下さい。
ダウ理論によるトレンドの把握
ダウ理論は、多くの市場参加者が意識しているとされる相場の基本的理論です。6つの基本法則から成り立ちますが、今回は基本的なトレンドの判断方法として、以下のようにまとめました。
ダウ理論による基本的なトレンド判断方法
上昇トレンド |
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下降トレンド |
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上昇トレンド |
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下降トレンド |
|
高安値の方向感が分からない状態は、レンジ相場と判断します。
基本的なトレンド判断方法を、実際にドル円の日足チャートを使って見てみましょう。
チャート画面の左側は、高安値の流れが分かりにくいレンジ相場でした。その後、安値を切り上げてレンジ相場内の高値を更新することで、上昇トレンドへ移行しています。
デイトレードやスキャルピングなどの短期トレードを行う際も、環境認識を行い長期的なトレンド状況を把握することで、相場の主要な流れに逆らわないポジションを持ちやすくなります。
水平ラインでレジスタンス・サポートを確認
水平ラインを引き、チャート上で意識されているレジスタンスやサポートなどを把握することも、FXの環境認識では重要です。
以下は、レンジ相場のときにできたレジスタンスラインが、上昇トレンドに転換した後でサポートラインに切り替わったチャート画像です。
水平ラインを引くことで、多くの市場参加者が意識している価格帯を視覚化できます。攻防が起きている価格帯を把握しておくことで、より強い根拠を持ったトレードを行うことができるでしょう。
今回は日足チャートで水平ラインを引きましたが、各時間軸でレジスタンス・サポートの節目は存在します。より正確な環境認識のためには、それぞれの時間足のチャートにラインを引くことをおすすめします。
有効な水平ラインの引き方は?
水平ラインの引き方に正解はありません。基本的には過去の値動きを考慮しつつ、意識されている高安値などに引きます。自分が引いたラインが有効かどうかは、そのラインで相場が反応したかどうかによってある程度確認できます。値動きからフィードバックを得ながら、水平ラインの精度を高めていきましょう。
マルチタイムフレーム分析で上位足から分析する
FXの環境認識では、トレードする時間足だけを見るのではなく、さらに上位足の相場環境の把握が重要です。ここまで見てきた「ダウ理論によるトレンド把握」と、「水平ラインによるレジスタンス・サポートの確認」を複数の時間軸で分析することで、より詳細な環境認識ができます。
以下は、ドル円について日足と1時間足のチャートを並べたものです。枠で示した部分が同じ時間帯になっています。
1時間足チャートには、日足に引いた水平ラインに加えて、1時間足で認識できるレジスタンス・サポートラインを追加しています。
もし1時間足だけを見ていたら、「レンジ相場だと思っていたら、いつの間にか上昇してしまった」ということになりかねません。しかし、環境認識によって日足が上昇トレンドであることが分かっていれば、サポートラインからの反発が見えつつある丸く囲った部分などで、押し目買いが検討できるのではないでしょうか。
スキャルピングのような短期トレードを行う際も、日足の環境認識からトレードポイントを落とし込むことで、トレードの精度を上げられるでしょう。
より多角的にFXの環境認識をしてみよう
ダウ理論、水平ライン、マルチタイムフレーム分析による基本的なやり方だけでも、FXの環境認識は可能です。
ここからは、インジケーターや通貨強弱などを考慮し、より多角的に分析する場合の方法を解説していきます。
長期的な移動平均線を意識する
テクニカル分析によってFXの環境認識をする場合、移動平均線は大まかな値動きの方向を知るために便利なインジケーターです。SMA(単純移動平均線)やEMA(指数平滑移動平均線)などいくつかの種類がありますが、おすすめは最も一般的なSMAです。
移動平均線で気になるのは、期間設定ではないでしょうか。考え方によってさまざまな期間設定がありますが、今回は時間軸ごとに以下の設定値をご紹介します。
移動平均線の期間設定
時間軸 | 移動平均線の期間 | 理由 |
15分足 | 96 SMA | 24時間(1日) |
1時間足 | 480 SMA | 20日(約1ヶ月) |
日足 | 200 SMA | 1年を想定 |
週足 | 52 SMA | 1年を想定 |
15分足 | |
移動平均線の期間 | 96 SMA |
理由 | 24時間(1日) |
1時間足 | |
移動平均線の期間 | 480 SMA |
理由 | 20日(約1ヶ月) |
日足 | |
移動平均線の期間 | 200 SMA |
理由 | 1年を想定 |
週足 | |
移動平均線の期間 | 52 SMA |
理由 | 1年を想定 |
FXの環境認識では、目先ではなく大きな流れを意識することが大切です。以下のチャート画像は、ポンドドルの1時間足に480 SMAを表示したものです。
移動平均線を1本入れることで、1時間足チャートだけでは分かりにくい長期的な環境認識ができるようになりました。例えば、「表示している移動平均線の方向に逆らわずにトレードする」のようなルールを設けるだけで、トレードに安心感を持てるでしょう。
ドルインデックスで通貨強弱を確認する
ドルインデックスの動きから通貨強弱を分析することも、FXの環境認識に役立ちます。
ドルインデックスとは、複数の主要通貨に対する米ドルの為替レートを指数化したものです。米ドルドルの価値が上昇すると、ドルインデックスも上昇します。以下は、ドルインデックスの日足チャートと、ドルストレート通貨ペアのチャートを比較したものです。
ドルインデックスの動きは先行指標となる場合もあるため、トレードする前に日足チャートなどをチェックしてみましょう。もし、各ドルストレート通貨ペアがレンジ相場になっていても、ドルインデックスでトレンド継続が判断できれば、エントリーポイントを待ちやすくなります。
海外FXでドルインデックスは取引できる?
海外FX業者によっては、取引銘柄としてドルインデックスを扱っている場合があります。特におすすめなのが、Titan FX(タイタン FX)と、Exness(エクスネス)です。
Titan FXでは、「USDX」というシンボルでドルインデックスを扱っています。低スプレッドや約定力に優れたブローカーであり、FXの環境認識としてドルインデックスを確認するだけでなく、利益を狙うトレードにもおすすめです
Exnessでは、「DXY」というシンボルでドルインデックスを扱っています。Exnessは低スプレッドをはじめとした取引環境はもちろん高いレバレッジが魅力であり、ドルインデックスでも最大無制限のレバレッジで取引可能です。
ドルインデックスは業者ごとに値動きが異なる場合がある
ドルインデックスは、ユーロドルなど一部の通貨ペアの比重を高くして算出している場合があります。また連動する指数が先物のものと現物のものがありますので、同じドルインデックスでも、値動きは業者によって異なる場合があります。
VIX指数でリスクオフ相場 / リスクオン相場を判断する
現在の相場がリスクオフ / リスクオンのどちらになっているかを判断することは、FXの環境認識を助ける場合があります。
リスクオフ相場とリスクオン相場の違い
リスクオフ相場 |
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リスクオン相場 |
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リスクオフ相場 |
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リスクオン相場 |
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リスクオフ / リスクオンを判断する代表的な指標が、VIX指数です。VIX指数は、「恐怖指数」という名称でも知られており、リスクオフになると上昇し、リスクオンになると変動がほとんどなくなります。
海外FX業者の中では、Titan FXなどでVIX指数を取引可能です。VIX指数について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧下さい。
FXの環境認識を始める際のコツ
FXの環境認識を初めて行う場合は、「どこから始めたら良いか分からない」などの悩みを感じるかも知れません。
ここからは、FXの環境認識を行う際に知っておくと便利なコツについて解説します。
日足を重視する
FXの環境認識で、日足は重要な役割を果たします。機関投資家や大口トレーダーは、日足を分析して売買を判断する傾向があります。多くの市場参加者が注目している日足は、環境認識を行う上で信頼性が高いといえるでしょう。
また日足には、短期的な時間足と比較してだましやノイズが少ない特徴があります。例えば、経済指標発表によって1時間足などでは粗い値動きが見られても、日足で見れば違和感なく織り込まれていることは珍しくありません。
その日の相場の大きな流れを把握するために、特にトレード前には日足のチェックを習慣化すると良いでしょう。
トレードスタイルに合った時間足で環境認識する
トレードスタイルによって、環境認識に使う時間足や実際にトレードする時間足は異なります。例えば、スイングトレードでは週足も重視すべきですが、スキャルピングでも同様に週足を重視すべきとはいえません。
トレードスタイルと時間足の関係は、一般的には以下のようになります。
トレードスタイルと時間足の関係
トレードスタイル | 環境認識を行う時間足 | トレードする時間足 |
スキャルピング | 15分足〜1時間足 | 1分足〜5分足 |
デイトレード | 4時間足〜日足 | 5分足〜1時間足 |
スイングトレード | 日足〜月足 | 4時間足〜日足 |
スキャルピング | |
環境認識を行う時間足 | 15分足〜1時間足 |
トレードする時間足 | 1分足〜5分足 |
デイトレード | |
環境認識を行う時間足 | 4時間足〜日足 |
トレードする時間足 | 5分足〜1時間足 |
スイングトレード | |
環境認識を行う時間足 | 日足〜月足 |
トレードする時間足 | 4時間足〜日足 |
また、環境認識を行う場合は、1つの時間足だけを見るのではなく、マルチタイムフレーム分析で時間足を使い分けることもおすすめです。
例えば、スキャルピングの場合は、1時間足で中長期の流れやレジスタンス・サポートを確認し、15分足で直近の流れを確認する、のようなやり方が考えられるでしょう。
テクニカル指標を使いすぎない
FXの環境認識は、「多くのインジケーターやテクニカル指標を組み合わせれば、より精度の高い分析ができる」とは限りません。それどころか、分析項目を増やすことで、迷いが生じてトレードできなくなったり、反対に主観的な分析を行ってしまったりするデメリットがあります。
まずは1つか2つ程度の使いやすいテクニカル指標だけを使用したほうが、自分なりの環境認識方法を構築しやすくなる可能性があります。
環境認識の落とし穴・注意点
環境認識は、FXの成績を安定させるために必要な技術です。しかし、やり方が適切ではない場合、トレードに悪影響を及ぼしてしまうことがあります。
ここからは、環境認識で気をつけたい落とし穴や注意点を解説します。
自分に都合良く環境認識してしまう
環境認識で最も注意すべきは、自分にとって都合が良いように相場環境を解釈してしまうことです。
例えば、「ここは買いだ!」と思っていると、上位足では下降トレンド中なのに、さまざまなテクニカル指標を用いて上昇を肯定する分析をしてしまうことがあります。上昇や下落のバイアスを持たずに環境認識することが重要です。
上位足のトレンドは絶対的なものだと考えてしまう
例えば、「日足が上昇トレンドだから、デイトレードでは買いしか考えない」というやり方は、間違いではありません。しかし、長期的なサポートラインの存在や、短期的なトレンド転換が重なった場合は、大きな下落が発生することがあります。
FXでは上位足に沿ったポジションを持つことが基本ですが、それが全てではありません。多角的に相場を把握してFX取引に役立てることが、環境認識だと把握すべきでしょう。
分析した環境認識と実際のトレードに一貫性がない
事前に十分に環境認識を行っても、目先の値動きに釣られて計画にないトレードを行ってしまうことがあります。これでは、せっかくの環境認識が無駄になってしまうでしょう。
環境認識によるトレード計画と、実際のトレードに一貫性を持たせることで、トレード結果の要因を特定したり、トレードの再現性を高めたりすることが可能になります。
FXの環境認識を磨いて、トレード力を底上げしよう
ここまで、FXの環境認識について解説してきました。
環境認識の精度を上げることは、FXの成績を安定させる上で高い効果があります。その意味では「FXの成績は環境認識で決まる」といっても過言ではないでしょう。
しかし同時に、資金管理やエントリータイミングを取る技術も、環境認識と同じくらいに重要です。環境認識が成績の向上につながるように、総合的なトレード技術を磨いていきましょう。
編集部の
コメント
ドルインデックス以外にも、原油とカナダドル、資源先物とオセアニア通貨などには相関性が見られることがあり、複合的な根拠としてFXの環境認識に使用できる場合があります。